生野毅ライブ『新・剪燈新話 第二夜「畏水」』

 皆様。

 紫陽花が巷で色づき始めた近頃ではありますが、皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます。
さて、急ですが、昨年秋に茅場町・ギャラリーマキにて『怪談・新・剪燈新話〜生野毅の怪談ライブ』第一夜を開催いたしましたが、その第二夜「畏水」を急遽、開催することといたしました。

 急遽、というのは、本来、「夏の怪談」として今年の8月に、ラブクラフトとブラックウッドという二大怪奇小説の大家の作品を「第二夜」として上演する心積もりでしたが(これは予定通り決行します)、この度起きた、あの未曾有の出来事に際して、ギャラリーマキでお世話になっているかたがたから「このような時だからこそ、自粛などするのではなく、上演すべきだ」と言われたことを契機に、突発的ではありますが第二夜を「畏水」と題して開催することになりました。この突発性も、あの未曾有の出来事と遠く響きあっていることをご理解ください。

 今回はあえて「怪談」の二文字を外しますが、もとより『新・剪燈新話』第一夜において上演した二つの物語においても、ただ怖がらせることを目的にしていたのではなく、怪奇とは人間の心の奥底に潜む闇や孤独、たましいの本当のふるさとへ至るための扉としてありました。今回のサブタイトルは「畏水」。いすい、といえば、永山則夫の小説のタイトルにも『異水』という印象的なものがありましたが、畏水、つまり畏れる水、水を畏れる、と題した動機について少し記します━。

 5月14日(土)から16日(月)にかけて、私は、友人と共に、現地の人の案内によって、東北の被災地を巡って参りました。そこで私たちが見たものは、「想像を絶する光景を見た」というのではとうてい言い尽くせない、「目の前で起きているものがいったい何であるのか想像できない」という、これまで味わったことのない異様な体験でした。何十キロ、いや、何百キロにもわたって道の両側に続く瓦礫、完全に無と化した志津川港や陸前高田、大きな船が津波で無造作に積み上げられ、重油タンクが転がる気仙沼、巨大な静寂そのもののような夕暮れの石巻の全景、やがて訪れた真の闇—どこにもほとんど人影がなく、聞こえてくるのは波と風の音、そして人に代わってあたりを支配しはじめたおびただしい海猫の鳴き声ばかり—。東北の広大な地域は、大震災勃発後2ヶ月以上たった後も、巨大な空洞と化した光景そのものでした。

 人間の想像力、創造力をはるかに超えたものの力を前にして、私は今なお、これからいかなる声と言葉をつむいでゆけばよいのか、未だにわからないままです。

 しかし、あの巨大な空洞に向かって、何事かを発せねば、という思いだけは強まっております。

 今回の突発的な、臨時便ともいうべき『新・剪燈新話』の上演は、帰京後もなおも茫然としている私への、ギャラリーマキの坂巻さんの強い促しによるものであり、それによって急激に私の中で高まったものであることを強く述べておきます。今回の「水を畏れる」二つの物語の内、『鬼来迎』はとりわけ、大震災と津波で被災されたすべてのかたたちへの魂に捧げたいと思います━。
                             生野毅 拝

 

Shono×Hisai-chi

生野毅が東北の被災地を訪れた際に撮影した画像の一部を、
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生野毅ライブ『新・剪燈新話 第二夜「畏水」』

 

  日時 2011年 6月 4日(土) 開場・PM4:30 開演・PM5:00
  料金 1000円

 

  ※お問い合わせは GALLERY MAKI まで。

   E-mail gallerymaki@hotmail.com TEL&FAX: 03-3297-0717 

 



〈 内 容 〉

  プロローグ・詩朗読『夏への扉』

 (1)第三話(話数は昨年の第一夜からの通しです)
    『水音』(原作・星新一)孤独な会社員が飼っているペット。
    誰もペットの正体を知らなかったが…!?

      〜休憩〜

 (2)第四話『鬼来迎(きらいごう)』(原作・山岸凉子)
    北のさびれた漁村に住む、都会から来た美しい母と心身に障害を持つ息子。
    息子が昼となく夜となく叫ぶ「鬼が来る!」とは、何を意味しているのか…!?

 (3)短いアフタートーク。

      〜終了予定 PM7:10頃〜

 



 † 生野毅の怪談ライブ『新・剪燈新話』 第一夜の内容については、
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