連続企画「論証―群島のアート考古学」のご案内

 世界はいま、変化の予兆を秘めながらも、足踏みするかのように蠢いています。あるべき姿の新しい政治、新しい経済、新しい科学、新しい文化と秩序、それらを可能にする創造的な想像力が待ち望まれています。

 2001年9月11日に起きた米国同時多発テロから6年がたちました。
私たちの「論証」は、例えば9.11テロで爆破されたツインタワー・ビルが廃墟として遺物のように残ったということをもって思考停止するのではなく、実はアメリカがその内部にながらく「廃墟」を抱えていて、それが9.11を契機にあからさまに露われ出たと捉えていくような視線からはじまります。それは既に「廃墟」を自己培養してきたそのアメリカの延長線上に私たちもいるということを先ずは見据え、そしてこの世界をどうとらえていくかという「視座」の提示でもあります。さらには縦の歴史―国境を引き、国家を成り立たせてきた表舞台の歴史、権力的な縦軸によってつくりだされるものではない、水平的な横の軸から歴史を省察していくことで、強い国家の影で貶められ、見落とされてきた、だが、かけがえのない名もなき人間がまぎれもなく生きてきた「場所」=「群島」を浮き彫りにさせ、そこに潜む固有の力を察知していく作業でもあります。それは国家という枠組みから勇気を持って一歩踏み出し、かといってその境界に立つのでもなく、そこすらも飛び越えた周縁から地球を眺め、海原に見え隠れする「群島」、その微かな存在から発せられる文化、芸術的表象を嗅ぎつけ見極めようとする試みです。

 すなわち私たちが慣習化し身に備えている価値観を相対的に撹拌させることで、制度を乗りこえ、制度に依って立つ美術すらも乗りこえてしまうような「表現」を引き出す行為。したがってこの「論証」自体が現行の美術に対して批判的にならざるをえないかもしれない。それはアート自体を揺さぶる、新たなる意識の運動ともいえます。

 「アート考古学」とは、忘却の彼方に追いやられてきた「無名性」、地底に響く無数の蓄積された死者たちの声とその美学を、いまを生きる私たちの表現を通じてつかみ出していくプロセスそれ自体なのです。この過程で私たちがみることになる表象は、もはや「美術」と呼ぶことさえはばかられる、人類の古層から発せられる切実な叫びでありながらも、未来の予兆を孕んだ、新たな世界へ向かう鍵ともいうべき、形容し難い表現となるかもしれません。

 「論証―群島のアート考古学」は、9.11以後の世界を見据え、新たな根源的「生命」を指し示そうとする企画です。
                      2006年 ギャラリーマキ
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連続企画「論証―群島のアート考古学」は、2006年より開始。
以降、次の3名が各々のテーマのもとに毎年、企画展を展開しています。

 【1】福住 廉[ふくずみれん/美術評論]連続企画

 【2】古川美佳[ふるかわみか/韓国美術・文化研究]連続企画
    表舞台から消され、あるいは手垢かにまみれた東アジアの文化を、そこ
    に根ざす人間の表現を通じてとり戻し、つなげ、再構築していく企画。

 【3】今福龍太[いまふくりゅうた/文化人類学・文化批評]連続企画

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